「お母さん食堂」の件で思うこと。自分の中にあった無意識の偏見について
昨年末にファミリーマートの「お母さん食堂」の名前変更を求める署名に肯定的なツイートをしたら、知らない人から否定的なリプや引用リツイートを複数されました。(初めての経験)
ジェンダーを学んだ高校生がこのブランド名に疑問を持つのはすごく自然で真っ当な感覚だと思う。
— ゆき@5y&2y 時短勤務 (@yuki18436612) 2020年12月29日
言葉狩りと非難してる人もいるけど、→
ファミマ「お母さん食堂」の名前変えたいと女子高校生が署名活動、「料理するのは母親だけですか?」|BUSINESS INSIDER https://t.co/SDzcjtyEOe @BIJapanより
ああ日本のTwitterって感じ〜!結論ありきでリプしてる感じで議論しても無駄っぽいなと思ったので、返信したりはしなかったのですが…
(でも煽られて1つだけリプしたな)
今は男性も家事育児をやって当然と思うし、実際に夫もやってますけど、私は育休中なんかは「家事や育児は主に私の仕事だからきちんとやらないと」という意識がありましたね。
— ゆき@5y&2y 時短勤務 (@yuki18436612) 2020年12月29日
こういう「母親の呪い」は私だけではなく女性なら多かれ少なかれ誰でも持っていると思う。 https://t.co/WxMau2PiCv
署名サイトでも説明されているように、日本では未だにジェンダーステレオタイプ(簡単に言うと「女は家事」「男は仕事」というやつ)が社会的に根強く残っています。
2020年のジェンダーギャップ指数も、153か国中121位と先進国の中で最下位です。
(参考:「共同参画」2020年3・4月号 | 内閣府男女共同参画局)
ジェンダーギャップ指数は、経済・政治・教育・健康の4つの分野のデータから作成されます。
日本は「教育」「健康」では大きなギャップはないのですが、「経済」「政治」の分野で差が大きいです。
男女間の賃金格差、政治家では圧倒的に男性が多いなど、確かに…と思う反面、このジェンダーギャップ指数121位というニュースを知った2020年初め頃の私は、「そんなに低いのか」と驚きつつ、「こんなに低いのに、なにこの私の危機感の無さは…。この危機感のなさがこのジェンダーギャップ121位という現実に現れてるのでは?」と、ジェンダーのことやフェミニズムについて興味を持ち、2020年は社会(学)系の本を数冊読みました。
(↑この本は以前Twitterで燃えたらしい。日本人が家事を重視するのはなぜか、その変遷や時代背景、諸外国との比較が解説されています。読んで、家事がんばらなくていいじゃん!!と思えた本。)
(↑Twitterでフェミニストの人のツイートを見ていると知らない言葉が多く、その勉強のために読みました。この本は上野千鶴子著でめっちゃ骨太でした。途中までしか読めてないけど、ミソジニー(女性嫌悪)について勉強になりました。特に「神聖視と蔑視は表裏一体」とか)
なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造 (PHP新書)
(↑この本は一昨年の年末だった気もするけど、面白かったです。自分の感じていたしんどさを言語化してくれてスッキリしたり、ステレオタイプ的な男女の役割に縛られない夫婦の働き方の事例も紹介されていて希望を感じた。)
本を読んだり、Twitterで流れてくるツイートを見たりする中で、今まで自分が持っていたアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が明らかになってきました。
- 私が飲み会(今は主にオンラインですが)に行くと「子ども達はダンナさんが見てるの?すごいね」とよく言われる(そしてそれ子持ちの男性には聞かないよね〜と思う)けど、私も子持ち男性に対して「奥さんが見てるの?」とは聞いてない。どうしてだろう?→「育児は妻が主に担うもの」という認識があるからでは。
- どうして私は私が時短勤務をすることを当たり前だと考えていたんだろう。夫がとることを初めから視野に入れなかったのは何故だろう?→「(夫婦どちらかがとるなら)母親が時短勤務をする」という認識があったからでは。
- どうして夫に長く育児休業をとってもらおうと初めから考えていなかったんだろう。→当時の夫の会社では長く取れる雰囲気ではなかったけど、「基本的に母親が長く育休をとるのが当然」と思っていなかったか?(これは日本の現実の状況もそうだけど)
- どうしてなるべく食事は手作りして一汁三菜は無理でも2品くらいはおかずを用意したいと思ってたんだろう?あとなんで私が作る前提で考えてたんだろう?夫も料理できるのに。→「母親が家族に栄養のあって美味しい食事を作るのが良いこと」と思ってた。
- 子どもは二人とも母乳だけでいけて、特に1人目の息子のときは最初は乳首が切れるし痛いしでめちゃくちゃ大変だったけど、「私が頑張ればいいなら頑張る」と頑張ってたら運良く母乳が軌道にのった感じ。でもその気合いはどこから来てたんだ…?→「母乳(の方がミルクより)が良いもの」という強烈な意識。母乳が出なかったら諦めてたと思うけど、それにしても母乳へのこだわりが強かったと思う。
これ全部「母親」の呪いですね…。
仕事と家事育児を両立しないといけないとか、「理想の母親像」からくるものとか。
(ちなみに、こう書くと「夫は家事育児しないのか?」と思うかもしれませんが、めっちゃしてます。特に料理は半年以上ほぼ夫がしてます。それでやっと最近、料理に関して理想を求める意識は薄れてきました)
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とはよく言ったもので、本当に無意識のうちにこういったバイアスが刷り込まれていて、そういう認識になっていました。時短とか育休とか含めて、私がしてきた選択は、どこまでが真に自分の自由意志に基づいた選択だったかというのが、ちょっとよくわからなくなりました。(つらい)
「自分の人生の選択を正解にしていくしかない」と思っていますが、その自分がしてきた選択は、ジェンダーステレオタイプに基づいた選択を無意識にしていたんじゃないか。
そんなアンコンシャス・バイアスが根底にある価値観で選んだものが、本当に「『自分の』選択」と言えるのだろうか。
という葛藤が私のなかで繰り広げられまして(自分の選択に対しての結論はまだ出ていないのですが)、こういったアンコンシャス・バイアスがあると、その人の人生の選択の妨げになる、というのは「お母さん食堂」の署名サイトでも説明されていますが、私自身とても実感しています。
なので、ジェンダーバイアスや性別役割分担の固定化、アンコンシャス・バイアスを助長する表現は、これからはなくしていったほうが良いと思います。
「お母さん食堂」の話に戻ると、署名をうけてファミリーマートが「お母さん食堂」の名前を変えるかどうかは、完全にファミリーマートに委ねられているというのは大前提として、「お母さん食堂」という名前は「お母さん=料理する人」と想起させられアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を助長したり、再生産する可能性があるので、ジェンダー平等の観点から考えると相応しくないと思います。
ジェンダーステレオタイプ的な表現は、「お母さん食堂」に限らず、広告や芸術の分野でも、日本中にありふれています。アンコンシャス・バイアスを持ったり、性別役割分担を内面化する度合いは家庭環境が大きいという気もしますが、社会に溢れるジェンダーステレオタイプな表現に触れながら、普通に日本で育った私は、前述のようにアンコンシャス・バイアスをバリバリに持っていたので、相当気をつけないと子ども達も同じことになると思っています。
なので、私は子ども達には、例えば「男の子だから泣かないの」などの「男らしさ」や「女らしさ」の規範を押し付けないように気をつけています。
また、もし一緒に観ていたTVでジェンダーステレオタイプ的な表現があれば、子ども達に話をしたいと思います。
このあたりの話は、先日読んだ「これからの男の子たちへ」を参考にして、息子と娘を育てる中で、ジェンダーのことを考えるタイミングが来たら逃さず、一緒に話して考えていきたいです。
(この本は今息子が5歳のタイミングで読めて良かったです。男児を育てる人におすすめします)
これからの男の子たちへ :「男らしさ」から自由になるためのレッスン
参考
ネットの海にこのタイトルの記事を流したら、また批判的なコメントがくるのは目に見えてるのですが…。批判したい気持ちがあるなら、その批判したい気持ちはなぜ出てくるのか、自分の中を見つめてほしいです。
この「お母さん食堂」の件について、Twitterや記事で私が参考になったものを以下にまとめます。
この問題でモヤモヤしている方は、目を通してみると考える助けになるかもしれません。
あんなさんの一連のツイート
くらげさんの一連のツイート
お母さん食堂の変更を求める署名活動を行うことは当然の権利なのだけど、それでなお、「底しれぬ気持ち悪さ」「強いいらだち」を感じて痛罵したい、という気持ちがせり上がってくる。この負のエネルギーはどこから自分のどこから出てくるんやろな?ということをずっと考えてる。
— くらげ@ものをかく36歳児 (@kurage313book) 2021年1月3日
飯田浩明さんの一連のツイート
ファミマの「お母さん食堂」の名前を変えたい、と署名運動が立ち上がったことについて、賛否の議論があります。「日本語研究者がだんまりなのは変だと思う、議論に言語学的な科学性を与えるべきでは」との近藤泰弘さん(日本語学)のご意見に、なるほどと思います。〔続く〕https://t.co/M3rOsK4jA3
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2021年1月2日
笛美さんのnote